きょう、知人から「TBSの誤報と訂正の件を知っているか」と問い合わせがありました。なんとなく聞いたような覚えはあったのですが、このところ北朝鮮によるミサイル連射の方に意識がとられていたせいか、はっきりしません。で、少し調べてみると、靖国問題でやらかしてくれていたようですね。
6月29日のTBS「NEWS23」は、米国・下院のハイド外交委員長の発言について、次のような字幕をつけました。
「私は日本の首相が靖国神社に行くべきではないと強く思っている」
なるほど、中国、韓国だけではなくて米国にも強硬な反対論があるということが言いたいわけですね。ハイドさんの主張については、朝日新聞なんかも鬼の首をとったように報じていますもんね。「参拝に何の問題もない」とする多くの米識者の言葉は、あまり取り上げないくせに。
ところが、この字幕が誤訳というか、かなり無理のある歪曲気味の訳だったことが分かりました。詳しい経緯は知りませんが、番組を見た英語の分かる視聴者が気づき、インターネット上で情報が駆け巡ったのでしょう。
そして、北のミサイルが発射された当日の7月5日の「NEWS23」で、アナウンサーは「翻訳の字幕表示に一部正確さを欠く表現がありました」として、ハイドさんの言葉を次のように訂正しました。
「私は日本の首相が靖国神社に行くべきではないと強く感じているわけではありません」
‥全然、意味が違います。180度とは言わずとも、90度ぐらいニュアンスが異なる。そんなに翻訳が難しいような誤解されやすい言い回しでもないだろうに。
TBSといえば、3年前には「サンデーモーニング」が石原慎太郎都知事の「日韓合併の歴史を100パーセント正当化するつもりはない」という発言に、「100パーセント正当化するつもりだ」という間違った字幕をかぶせ、つい最近謝罪して和解したばかりではありませんか。
歴史認識問題という微妙な問題について、こうもある一定方向に視聴者を誘導しようとするような誤報が続くと、たとえ本当に偶然であっても、何らかの意図を疑われても仕方ないだろうと思います。
あるいは、靖国参拝を批判する自らの立場を正義だと思い込みすぎて、「動機は正しいのだから」と一つひとつの発言の細かい検証や確認作業を怠ったのでは、とも考えたくなります。他社のことですから分かりませんが。
特に、靖国問題については近年、必ずしも誤報とまではいえなくても、日中間のいざこざはすべて靖国参拝に原因があるような無茶な報道が相次いでいます。諸悪の根源は靖国神社にあるかのような、単純かつ歪んだ解釈がまかり通っているのです。
たとえば、昨年春に中国で反日デモの嵐が吹き荒れた際、日本のマスコミの多くは、デモの原因がまるで首相の靖国参拝にあるかのようなキャンペーンを張りました。
しかし、このときは首相はすでに1年3、4ヶ月も靖国参拝をしていませんでした。先日、デモを体験した前上海総領事の杉本信行氏にインタビューをした際に、この点について意見を求めたところ、杉本氏はこう明確に指摘しました。
「あの官製デモの直接の引き金は台湾問題。台湾海峡有事における日米協力体制の進展を妨げるため日米離反を狙ったもので、そのためにデモで日本の常任理事国入り反対が叫ばれた。あのときは首相は靖国に行っていないので、靖国に中国が反応する理由がない」
確かに、靖国問題は日中間で大きな政治問題になっていますが、小泉首相自身が繰り返し訴えているように、日中間の問題はそれだけではありません。杉本氏はインタビューで、靖国に行かなければ問題はすべて解決するという中国側や一部マスコミの言い分を、即座に否定していました。
これは当たり前の話で、靖国問題が仮に解決しても、日中間の歴史問題はそっくり残ります。むしろ、靖国で日本側が持ちこたえているからこそ、他の問題に中国の目が向かないという見方もできるはずです。
しかし、日本の多くのメディアはこのところ、靖国神社に集中砲火を浴びせ、首相を批判することでこと足れり、といった安易な構えです。この単細胞ぶりはどうにかならないものかと、同じくメディアの片隅に身を置く者として、焦燥を覚える日々です。


by akizuki
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