柳沢伯夫厚生労働相の「健全」発言をめぐり、また野党とマスコミが大騒ぎしています。野党が騒ぐのは、とにかく安倍政権をたたき自分達を優位な立場におこうという意図があるから、ある意味分かりやすいのですが、マスコミはどういうつもりなのでしょうか。私はそのマスコミの末端に籍を置くものとして今、心底、恥ずかしいと感じています。
柳沢氏の最初の「機械」発言については、文脈上のことはともかくとしても、やはり愚かな発言だったと思いますし、批判されても仕方がなかったでしょう。でも、今回の「健全」発言はどうでしょうか。少子化対策に取り組む役所の長が、若者が子供を持ちたいとアンケートに答えたことを歓迎したことが、それほど間違ったことなのでしょうか。
あるいは、もっと適切な言葉があったのではないかとの見方はできるかもしれませんが、これほど袋叩きに遭うような失言であったとは思えません。
昨日のことですが、私の所属する記者クラブ内で、他社の記者がこの問題について話しているのが聞こえました。そのうちの一人が、自分がしゃべっている内容に興奮したのか、次のようなことを大声で主張し出しました。
「僕は機械発言より、今回の健全発言のほうが許せない。うちは子供が一人だけど、うちは健全じゃないということになる。健全という言葉遣いからは、ナチスの優性思想を連想してしまう。これは優性思想だ」
他社同士の会話だったので口をはさむことはしませんでしたが、「それは言いがかりだろう」と思いました。自分の思いつきに酔って、いい加減なことを口走るなと。さすがに、会話の相手をしていた別の記者は「さすがにそこまではないだろう」と同調しませんでしたし、その会社が「柳沢氏はナチスと同類」と報道しているわけではありませんが…。
自らの、あるかなきかのひとかけらの小さな正義を振りかざし、他者を攻撃し、貶めることによって自らの権力を確認して満足するマスコミ。自分も報道に携わっているだけに、この会話を聞いていて嫌悪感を覚えずにはいられませんでした。
落ちた犬をたたくのはマスコミの習性ではありますし、私自身、過去の記事で他人を必要以上に傷つけなかったのかといわれると自信はありませんが、それにしても程度の問題だってあるだろうと。それに、もっと取材の労力と紙面のスペースを割くべき重要な問題がいくつもあるでしょうし。
そこで、昨夜の柳沢氏の記者団に対する説明と、安倍首相のぶらさがりインタビューから、関連部分を紹介します。この問題について考える一助になれば幸いです。
■厚生労働省玄関前で
《記者 発言の真意は。
柳沢氏 文脈からも明らかだが、全体の状況について私としては、若い人全体の意識はそういうことだということで申しあげた。
記者 何故「健全」という言葉を使ったか。
柳沢氏 全体の状況が健全だと思ったから。
記者 評価と言うことか。
柳沢氏 全体の状況がそうでないとすれば、我々も大きな混乱に漂着する。
記者 野党から「女性の尊厳を傷つけるものでないか」と批判が出ているが。
柳沢氏 文脈をみてもらえれば分かるが、私の発言の真意を誤解されることはないと思う。
記者 厚労省調査で「未婚者の85%は子供2人以上を望む」というのは分かるが「健全」という形容詞を付けて話す必要があったのか。それが大臣の評価につながるのでないか。
柳沢氏 そうでないという比較で、全体の状況が我々にとって環境整備さえすれば、合計特殊出生率の低下を防げるのでないか。そういう希望がもてるということだ。
記者 2人以上子供がいない人、独身主義者の人については。
柳沢氏 そういうことをみんなが自由に判断するのは我々の社会の前提だ。私は衆院の厚労委員会で明確に話を述べている。「出生率1・39を目標にしたらどうか」と質問され、私は「適切でない」と答えた。「子供を産まない、結婚するしないは個々人の自由意志で決まる。それを前提で我々の社会は成り立っている」と述べている。それが私の基本的考えだ。
記者 「健全」という言葉を使ったことで、それ以外は「不健全」と思われるのでは。
柳沢氏 「人」でなく全体の状況が、我々はありがたいと言っている。個々人の状況が自由であることは国会答弁でも明快に述べている。
記者 発言自体は不適切でないということか。
柳沢氏 全体の状況についていったんですよ。文脈からも明らかだ。
記者 全体の状況を語る中で「健全」という言葉を使ったのは適切だと今でも考えているのか
柳沢氏 不適切とか適切とかじゃなくて、私も少子化対策で一生懸命やろうとしてますから、(若い人の)希望がある程度実現したらどうなるかを考えているので、我々にとっては大変ありがたい。そういう全体の状況を申しあげた。僕にとっては大変ありがたい希望を実現すれば、そういう環境を整備すればいいという気持ちを申しあげた。
記者 若い人全体の状況を言っていたとしても、そのなかに未婚の女性・・
柳沢氏 それはね、若い個々の人たちに対しどういう考えを持っているか、考えは国会答弁で明快に答えているのだから。
記者 前の発言もあり、真意がそこにあったとして、厚労相という立場で・・
柳沢氏 大臣として申しあげた。
記者 「ありがたい」状況だとしても、「健全」という言葉で表現したのは不適切だったのでないか。
柳沢氏 私はそう思わない。文脈から言って、それを私がプラスの方向で捉えているということに尽きる。
記者 大臣が仰ったことで、少なからず傷ついた人がいるのでないか。
柳沢氏 いや、それはもうよく読んでいただく。よく文脈の中で発したのだから、素直に聞いてもらいたいと思っている。
記者 「健全」は「ありがたい」と置き換えていいのか。
柳沢氏 いや。健全という言葉は、全体としてはそういうことでもある。
記者 野党から進退について辞任論が強まることが予想されるが。
柳沢氏 これは私の考えをしっかり理解していただくように、これから努めるということに尽きる。
記者 辞任しないのか。
柳沢氏 今まで申しあげた通り、与えられた任務をしっかりやっていきたいと思っている。
記者 前回も今回も「自分の真意は違う」と話しているが。
柳沢氏 今私そんなこと言ってないですよ。真意は個々人の全くの自由です。そういうことをかねてから言っております。今度のことも、文脈からいって、全体のことを申しあげたのだ。
記者 だが、この2回とも「自分の発言はこういう意味で言ったのだ」といったではないか。
柳沢氏 それは皆さんがもう聞かれるから「私はこう言ったんですよ」と言うわけですよ。
記者 そう説明しなければいけない言葉を2度にわたって使った事は、自身で反省はないのか。
柳沢氏 前回のことは本当に不適切ということで、皆さんにお詫び申しあげた。しかし今回のことは、文脈から言っても全体のことを申しあげたのは明白だと思っている。さらにそれについて色々仰られるのは、前回のことがあったのでやむを得ないかと思って、今の皆さんにこうして答えている。
記者 「全体のこと」とは具体的に何を指すのか。
柳沢氏 状況全体。今の若い人の意識全体。専門的な言葉は使いたくないが、集合体として日本の若い人の状況だ。
記者 前回の発言と合わせると「たくさん産む女性は偉い」と聞こえてしまう。
柳沢氏 今まで言ってきたことをよく受け止めてもらいたい。
記者 自身としては、そういう趣旨で言っていないのか。
柳沢氏 私が今ここで言ったように、前回もそうだがね。あれは表現が失礼な不適切なモノの言い方で、「ごめんなさい」と謝った。それ以後のことは、私はその都度申しあげてきたのでご理解いただきたい。
記者 「健全」の定義づけが「ありがたい」という意味で使ったのなら、逆を返せば子供を欲しがらない、産まないというのは不健全ということか。
柳沢氏 お話ししているように、国会の厚生労働委員会で私は答弁している。結婚する、しない、子供を持つ持たないは自由意志。何回もぶり返すようで恐縮だが、私の気持ちがどの辺にあるかはご理解を賜りたい。》
■首相官邸で
《記者 柳沢大臣が閣議後会見で「若い人たちは結婚したい、子供を2人以上持ちたいという極めて健全な状況にいる」と発言した。この発言についてどう考えるか?
安倍氏 施政方針演説で申し上げたわけですが、結婚したい、あるいは子供を持ちたいという方々が安心して結婚し産み育てることができる、そういう日本にしていかなければならないと考えています。そのための政策を推進していくことが大切であって、その考えを大臣は述べられたのだろうと思います。
記者 2人以上持たないことは「健全ではない」のかという批判がでているが?
安倍氏 大臣は特定の価値観について述べたのではないと思います。あくまでも子供を持ちたい、あるいは結婚したいという方々の願望が叶う日本にしていかなければならないという気持ちを述べたのだと思います。
記者 この発言に総理は問題ないとの考えか?
安倍氏 我が家も残念ながら子供はいませんが、そういう言葉についていちいち反応するのではなく、柳沢大臣が何をやろうとしているか真意をくみ取るべきだと思います。
記者 民主党管代表代行も年始の党大会で「東京は日本で一番生産性の低い都市。出生率0.98という最も低い生産性を示している都市」と述べていた。この発言についてどう思うか?
安倍氏 いちいち言葉尻を捉えて言うよりも、どういう政策を進めようとしているのかという議論、論戦をするべきだと思います。どういう政策をしていくか議論したり、吟味することが大切だと思います。》
…あえて論評は避けたいと思います。ご自由に判断してください。


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東京を離れて署名してきました…