今回の北朝鮮によるミサイル連射で、敵基地攻撃能力保有論が突然出てきたようにいう人がいますが、それは事実誤認です。北朝鮮がテポドン1号を発射した平成10年9月18日の衆院安全保障委員会でも、当時は無役だった安倍晋三氏は、その必要性を訴えていました。
安倍氏についてはよく、雑誌などで小泉首相の路線を引き継ぐだけだという評価を目にしますが、果たしてどうでしょうか。外交、安全保障、教育に関心が薄く、「思想がかった話がとにかく嫌い」(公明党幹部)とされるリベラルな小泉氏と違って、安倍氏は歴史と伝統を重視する正統保守派であることは間違いありません。
無役のときから、ベテラン議員たちの嘲笑を浴びながら北朝鮮問題に取り組んできましたし(私は、官房長官時代の野中広務氏と副長官だった鈴木宗男が、安倍氏の言動について「ああいうはねっかえりはどうにかしないと」と談笑しているのを見たことがあります)、教科書正常化を目指して議連活動も熱心に行っていました。
安倍氏は割と長幼の序を大事にする人なので、勝手に甘く見ている政治家が多いのでしょうが、おそらく首相になれば小泉さんとは全然違う施策を打ち出してくるだろうなと思います。
ともあれ、8年前の話です。安倍氏の質問に答弁したのは、偶然にも今と同じ額賀防衛庁長官でした。以下、主なやりとりを記します。
安倍氏 「当然わが国も、もしミサイルを発射された、またあるいは航空戦力によって攻撃されたというときには、報復をするということにおいて抑止を果たすことができるのであろう、こう私は思います。(中略)安保条約いかんにかかわらず、わが国にとって報復することが合憲であるかどうかについて、ご見解をいただきたい」
額賀氏 「昭和31年の政府見解は、私も法理論上は生きているものと考えております」
安倍氏 「安保条約5条は、具体的に日本が攻撃されたときにアメリカが報復をするという、義務規定ではないわけであります。その場合においては、わが国が報復する能力を持っていなければ、抑止力の穴があいてくるのではないか。日米安保条約というのは信頼関係の上に成り立っているわけでありますが、ただ、(米国が)報復をするかどうかという判断ははっきりしない範囲がある。もし万一北朝鮮からミサイル攻撃や航空機攻撃があった場合、その基地をたたく能力は自衛隊にあるかどうか。例えばF15あるいはF2によって、たたく能力があるか現在の段階でお伺いしたいと思います」
額賀氏 「特定の国の名前を挙げて議論することはいかがなものかと思いますが、全体的に、日本が装備しているものは攻撃的なものはありません。また、法律上も専守防衛ということで成り立っておりますから、ご指摘のように、あらゆる場面において万全の攻撃態勢がとれるという状況ではないと思う」
安倍氏 「この状況は少しおかしいのではないか。すべて米国の若者の血と生命によらなければわが国の生命と財産が守れないかもしれないということになります。例えばF15なりF2なりが、今ないわけではありますが、空中給油機を使ってその足を延ばして、第2次攻撃を防ぐためにその基地を攻撃することは果たして合憲であるかどうかについて伺いたい」
額賀氏 「空中給油機を保有、運用したとしても、現在の自衛隊は敵の基地を攻撃する目的に装備体系をしているのではないので、敵基地に対し軍事的な有効な攻撃を行うことはなかなか難しいのではないか」
‥このやりとりから8年もたつのに、日本の防衛の現状はあまりに変化していないようなのが残念です。ですが、これだけ安全保障に関心を持った人物が総理・総裁候補となるのはいいことでしょう。日米同盟の大切とその限界の両方を踏まえた発言だと読み取れます。
少なくとも、防衛庁長官経験者でありながら、特定アジアの意向を踏まえてか、閣僚の敵基地攻撃能力の保有論について「憲法違反だ」との根拠のよく分からない批判を加え、封じ込めようとした山崎拓氏よりは、100倍見識があるのではないでしょうか。


by akizuki
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