すこし古くなりますが、今年3月ごろの話です。私はあるアジア某国のベテラン外交官と話す機会がありました。当然のように小泉首相とアジア外交の話題になったのですが、彼はこう話してくれました。
「小泉政権になって、初めて中国にまともに対応できる政権ができた。それまでは『日中友好』という言葉に縛られて、言うべきことも言ってこなかった。藤尾文相、奥野国土庁長官と、日本の閣僚が教科書とか戦前に関する発言で更迭されるのを何度も見てきた。日本人が本音でしゃべって中国の機嫌が悪くなると、日本政府は右往左往してきた。正常な国なら、相手国の国内向けの発言をこんなに問題にしない」
「小泉首相のこれまでの対応によって、次の首相は靖国の呪縛が解けると思う。中国にしてみれば、もうこの話を持ち出しても効果がないことは十分、分かっただろう。次の首相になれば、中国はもう、あまり靖国を持ち出すことはないのではないか」
「国と国の間には、『日中友好』という四文字で定義された以外の国益も立場もあるのだから、言うべくことは言うべきだ」
アジアは「特定アジア」だけではない。この当たり前の事実がどうしても分からない、分かりたくない人がメディアにはまだまだ多いようですが、国民の方は覚めてますよね。私の海外経験は浅いものですが、それでもインドやインドネシアでは、中国が歓迎されていないことはよく分かりました。ベトナムやフィリピン、マレーシアにしたって、寡聞にして中国が好きだとか愛されているとかは聞いたことがありません。
アジアで警戒され、嫌われているのは日本ではなくて、中国の方なのではないでしょうか。アジア諸国は、台頭する中国パワーに唯一、対抗できる日本に「中国に屈しないでくれ。中国一国によるアジア支配を許さないでくれ」と内心、思っているように感じていますが‥
さきの外交官は、別の機会には「日本の中国報道も変わった。昔は中国を美化し、朝日新聞などは文化大革命礼賛ばかりだった。しかし、今はインターネット社会だし、実際に中国に行って見てきた人も多いので、そんなにほめてばかりの記事は書けない」と笑っていました。
小泉首相は、中国がどんなに日本の政界、財界、マスコミ界を総動員して靖国参拝批判を展開しても年に一度の参拝は続けました。そうすることによって、日中関係を悪くしたというよりも、臣従体制から対等な関係へと正常化したのではないかと愚考しています。
反対の悪い例が、昭和60年8月15日に靖国に公式参拝しておきながら、翌年からは中国に配慮して中止してしまった中曽根康弘元首相ですね。さてここで、当ブログで過去に二度取り上げたマキアヴェッリの言葉を、またまた紹介したいと思います。小泉首相と中曽根氏の事例に、符合する部分があるからです。
《君主は、自らの権威を傷つけるおそれのある妥協は、絶対にすべきではない。たとえそれを耐え抜く自信があったとしても、この種の妥協は絶対にしてはならない。
なぜならほとんど常に、譲歩に譲歩を重ねるよりも、思いきって立ち向かっていったほうが、たとえ失敗に終わったとしても、はるかに良い結果を生むことになるからである。
もしも、正面衝突を回避したい一心で譲歩策をとったとしても、結局は回避などできないものだからだ。
なにしろ、譲歩に譲歩を重ねたところで相手は満足するわけでもなく、それどころか相手の敵意は、あなたへの敬意を失ったことによって、より露骨になり、より多くを奪ってやろうと思うようになるのがオチなのだ。
また、思慮もない単なる譲歩策によって示されたあなたの弱みは、味方になり得た人々をも失望させ、彼らを冷淡にさせてしまうだろう。
反対に、もしあなたが、相手の真意が明らかになるやただちに準備をし、たとえ力が相手に劣ろうとも反撃に出ていたら、敵といえどもあなたに敬意を払わざるをえなくなるのである。
そして、他の国々も敬意を払うようになり、結果としてあなたは味方を獲得することになる》(塩野七生訳)
省略する部分が見つからず、少し長くなりました。本当に、先人の知恵というのはたいしたものだな、と思います。人間が昔から進歩していないのであれば、昔の知恵もだいたいそのまま使えるんじゃないか。そんなことを考えているきょうこのごろでした。
http://abirur.iza.ne.jp/blog/trackback/21117
2006/08/02 19:19
>反対の悪い例が、昭和60年8月15日に靖国に公式参拝しておきながら、翌年からは中国に配慮して中止してしまった中曽根康弘元首相ですね。
政府機関の長でもないのに、閣下という敬称を付けて差し上げた「中曽根書簡」を、相手に証文ととられたのが事態がこんぐらがらせた出発点です。中曽根にしてみれば胡耀邦閣下が追放されたので約束はチャラになったと考えたのでしょうが。
あのいかがわしげな「富田メモ」に、中曽根も最近よくやってるなどと提灯持ちメモがあるなど、どういうグループが画策したかが透けて見えます。
2006/08/02 19:24
2006/08/02 19:32
amber19850921様
韓国や北朝鮮はそもそも日本と戦争していたわけではありませんし、靖国神社とは基本的に関係ないはずですからね。今の大統領になってやたら干渉してくるようになりましたが。
2006/08/02 20:03
2006/08/02 20:03
今晩は。
中曽根さんが、公式参拝をやめた事が日本組み易と中国は考えたと想像します。
人の意向を伺う風見鶏、中曽根さんと信念の人小泉さんでは、評価も違って当然だと思います。
小泉さんを絶賛しないのは、公共事業縮減の煽りを受けた建設業界。
2006/08/02 20:30
マキャベリ氏は現実に基づいた、いいこと書いてますね。君主論はもっと読まれるべきだと思うのですが、なぜか権謀術数の悪の手引書みたいな悪いイメージがついてます。
私も、日中関係をこじらせた原因の1人は中曽根氏だろうと思います。しかしいまだにマスコミに登場するというのはいったいなぜでしょうね。
2006/08/02 21:37
> 反対に、もしあなたが、相手の真意が明らかになるやただちに準備をし、たとえ力が相手に劣ろうとも反撃に出ていたら、敵といえどもあなたに敬意を払わざるをえなくなるのである。
> そして、他の国々も敬意を払うようになり、結果としてあなたは味方を獲得することになる
なんか 「大東亜戦争」の事を言っているようにも思えます。
2006/08/02 21:39
2006/08/02 21:46
福沢諭吉の脱亜論が正解でしたね
>韓国や北朝鮮はそもそも日本と戦争していたわけではありませんし
中華人民共和国とも戦争していません
蒋介石の中華民国と戦争してました。
中国共産党の毛沢東は日本に謝罪と賠償を求めていません
その当時の人が求めてないので
今更、靖国批判とか南京大虐殺で賠償(数年後ごとに死亡人数が変わる面白い事件)などおかしいですね
2006/08/02 21:51
レン(仮名)様
そもそも、南京大虐殺記念館がつくられたのが1985年だというのがなんとも政治的ですよね。事件があったとしても50年近く経過している。それからさらに20年以上。もういいかげんにしてほしいところです。
2006/08/02 22:15
阿比留さん 今晩は。
当地は今日梅雨明けです。久しぶりに30度を超えたので、日が落ちてから運動を兼ねて自転車で一番遠い本屋に行ってひと汗かきながら正論買ってきました(当地は店頭に出るのが1日遅れー地域格差?)。
阿比留さんの今日のエントリは「節だけは曲げなかった小泉首相の5年間」の、紙面の都合で語れなかった結論になるような気がします。
扇風機を背にして、焼酎のグラスを片手に読ませて頂きました(^_^)v。
2006/08/02 22:34
安倍氏は参拝見送りが規定路線になってるけどそれでいいのでしょうか。安倍氏には是非参拝して官房長官談話を発して欲しい。靖国参拝はリトマス試験紙みたいなもので、これに反応する国とは何を話しても上手く行かないでしょう。だから曖昧に先送りしてはダメ。今の世代ではっきり主張すべきです。
2006/08/02 22:54
2006/08/02 22:57
hiry900様
安倍氏は8月15日には参拝しないと思いますが、秋の例大祭には行くと思います。小泉首相が15日を公約したため、この日に注目が集まっていますが、靖国にとって本来、重要なのは例大祭の方なので。
2006/08/02 23:38
>阿比留瑠比 様
> 私のささやかな望みは、中国や韓国にほんの少しは日本に対する敬意を示してもらうことです。高望みでしょうか。
中国人は現実主義者ですから、その点から考えると中国を狙った核ミサイルを100発ほど持てばよいです。
それ以外となると、日本人全員が産経の読者になることですね。そのためには、朝日じゃなくて読売を攻撃して、読売読者を産経に引っ張ることですか。朝日、毎日の読者よりも読売の読者のほうが産経に引きつけやすいと思います。
上記、冗談ですのでよろしく。亀田選手の試合で、なんか機嫌が悪くなってしまったw。
2006/08/03 00:10
> 靖国参拝はリトマス試験紙みたいなもので
私は最近、政治、特に外交に関して人の考え方を判断するとき、靖国参拝を試金石にしています。今、これだけ色々なことに絡んでいる問題はなかなかないですからね。
例えば、首相の靖国参拝について「中国や韓国の人は嫌がっている。小泉は人の心がわからない冷血漢だ」とかいう人がいます。
その人は、彼らの「心」とやらが国に誘導され、作られたものであることをわかっていないということになります。
つまり、もし心を痛めているとしても、こちらの問題ではなく、彼ら(の国)が勝手にやっているわけです。そんなものに付合う必要はありません。
こんな感じで、靖国参拝についてどう考えているかを語らせるとその人の考え方が簡単につかめて便利ですね。
2006/08/03 00:19
その通り、その通り、朝日しか読まない脳タリンはよく読んでおけ。日本ではどうしてこんな当たり前のことを支持する人が少ないんだろう。いや、多くはなってますが。
朝日なんか、あんな、頭が狂っているとしか思えない馬鹿新聞をありがたがる。よっぽど薬が効いているんだろうけれども。
何年かたって、朝日系が根絶やしになったときに、小泉の名宰相としての位置が誰の目にもあきらかになるんでしょうね。
今はまだ普通の人にはわからないんでしょう。テレ朝やTBSでいい気になってしゃべっているコメンテーターを、よくこんな馬鹿なことを人前でしゃべってられたなとみんなで笑える日が早く来ますように。
2006/08/03 01:20
私たちが靖国神社に対して特別の想い入れがあるのとは別で,中韓以外の外国から見ると首相が靖国参拝することで国家として対等関係になることができるという見方なのですね.
媚中の政治家の方々には,かつて聖徳太子が「日のいずるところの天子が日の沈むところの天子に送る」との書簡の意味をもっと噛みしめて欲しいですね.
そういう政治家を選挙で選ぶ国民を啓蒙することが先かな..
2006/08/03 04:43
talkenさん
>媚中の政治家の方々には,かつて聖徳太子が「日のいずるところの天子が日の沈むところの天子に送る」との書簡の意味をもっと噛みしめて欲しいですね.
この話が我が国の史書に残っていなくて、かの国の史書に記録されているというのも、興味深いですね。
慎み深いのは民族性かな。しかし、嵩にかかって言いつのられると、頭に来るのも民族性みたいですね。
2006/08/03 08:22
おはようございます。
今日も福岡は暑くなりそうです。
日本に生まれ、日本人である事に誇りをもてる記事に感謝します。
中曽根、宮沢、野中氏の発言をよくマスコミで見かけますが何か日本を動かす影響が有るのでしょうか?あの人たちは「負の遺産」だけを残して引退されたと思うのですが・・
益々のご活躍期待しています。
2006/08/03 08:56
koku様
国際政治アナリストの伊藤貫氏によると、小型核を200発持てば、相手が何万発の核を持っていようが抑止できるそうです。日本にはその技術と資金はあるのでしょうが…
2006/08/03 08:58
2006/08/03 09:01
さくやこの花様
国会での朝日の権威失墜は著しいですよ。特に朝日が安倍氏と中川氏をはめようとした女性戦犯法廷以降は、野党の議員が「朝日新聞によると‥」と質問すると、議場から「また朝日すかよ」と失笑が漏れ、野党議員が「他の新聞にも載っています」と言い訳する場面もありました。
2006/08/03 09:05
くぼた様
別に政治家に限らないのかもしれませんが、年老いた政治家は、自らの過去の業績を否定しかねない新しい動きに敏感で、それを封じ込めようとすることが多いようです。行き過ぎると、「老害」となって、晩節を汚すことになりかねないと思うのですが。
2006/08/03 10:46
>阿比留瑠比 様
マスコミは総じて危機感がないですね。NHKは、「経済発展の著しい」を中国の枕言葉にしてます。なら、産経は「核ミサイルで日本をねらう」を枕言葉にして、実情を言うべきでしょう。日中友好どころではないです。
また、北朝鮮は核兵器保有を宣言してます。何年かすれば、核ミサイル保有宣言になるでしょう。核兵器についてまじめに考えるべき時です。
中国の傲慢な態度、日本に限らず世界中の国々に対してそういう態度ですが、この態度の裏は軍事力、核兵器にあります。何をしても何を言っても、おまえらは中国に手出しできないだろうというわけです。日本が通常兵力に限定する限り、中国の日本に対する傲慢な態度は不変でしょう。
2006/08/03 10:56
正論だ。
実に昔の賢人の言葉で現代のほとんどの状況を語れる。
ドストエフスキーなどは、まだ誕生すらしていなかった旧ソ連の、将来むかえるであろう矛盾と挫折、さらには不能まで予言していた。
さらにその後の言葉がすごい。
「しかし占星術が天文学を、錬金術が科学をもたらしたのと同様、社会主義も人類に何らかの貢献をするであろう」
まるで現代の管理通貨制度や重管理型市場経済、先進国の社会福祉制度まで見越したかのごとくだ。
ドストエフスキーは熱き魂の人だった。同時に冷徹な批判精神を兼ね備えた人であった。
小生も不導体でいるより、せめてどちらかの一方でも持ちたく思う。
2006/08/03 11:14
koku様
以前のエントリでも書きましたが、日本政府が「非核3原則を見直す検討をする」と一言述べるだけで、びびる国が(米国を含めて)ありますよね。実際はともかく、あらゆる選択肢は捨てていないという姿勢が大事でしょう。
2006/08/03 11:49
今日は。
最初から媚中の政治家はともかく、中曽根氏や橋本氏のように、ある日突然、掌を反す政治家に一体何があったのか、どのような工作が行われたのか後日、メモが発見されないかと期待しています。(笑)
2006/08/03 12:02
kazakumo様
中曽根氏はけっこう筋金入りの親中で、首相退任後も、何度台湾に誘われても台湾に行こうとしないそうです。橋本氏は自分の言動が媚中とみられることを自覚していて、それでもやめませんでしたから、何かにぎられていた可能性はありますね。
2006/08/03 15:59
いつも思うのですが、この国のリーダーを目指す人たちは、もう少し歴史を勉強していただきたいです。
かのクレメンス・W・メッケルは関が原の布陣を見て「西軍の勝ち」と断言したのは有名ですよね。
自らの歴史を「戦争の歴史」と自負する、ヨーローッパのエリート軍人ですらも見抜けなかった、謀略の歴史がわが国にはあるのです。
しかし、先の参議院否決から衆議院選挙までの流れなどは、関が原前夜の謀略戦さながらでした。
小泉・家康の衆議院薄氷可決(会津征伐)の隙を突いて、亀井・三成の参議院多数派工作(西軍結成)、etc・・・
聞くところによると総理周辺は1年も前からこのプランを描いていたとか、総理の側近たちは歴史を参考にしたのかも・・・。
先人の失敗から学ぶことのできない近視眼的政治家はものの見事に引っかかりました。
岡目八目といいますが、すでに傍観者の立場にある、かの大勲位も、自身のことになると目が曇り、晩節を汚しているのが残念です。
2006/08/03 16:33
rx7gtrnsx様
政治家は自分自身で決断する能力が必要なのは当然ですが、周囲に情報アンテナを張り巡らせることも大事なはずです。ところが、自分が偉くなりすぎて、周り(現場の記者も含めて)から情報をもらおうとしなくなる人がいます。そうなると、一人相撲をとることになりますよね
「公式参拝」、「公的参拝」それぞれどうオーソライズされるか? [gujin blog]
阿比留瑠偉ブログ http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/687887/allcmt/#C772783 の文章訂正・再録。 (mochizukiさんの回答が得られないのでここに再録します) いわゆる「公式参拝」を誤解していました。この「公式…
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by akizuki
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