昨日、私は元朝日新聞記者、本多勝一氏に裁判で3連勝したことで知られる元東京学芸大助教授、殿岡昭郎氏の紹介で、この3月に「世界ウイグル会議」の日本代表に就任したイリハム・マハムティさん(38)から、中国・新彊ウイグル自治区の現状などについて話を聞く機会がありました。世界ウイグル会議は、亡命ウイグル人らによる国際組織で、2004年4月にドイツ・ミュンヘンで立ち上げられたばかりの新しい組織だそうです。イリハム氏は、「ウイグルの現状を日本のみなさん、社会に伝えたい」と語ってくれました。今回はイリハム氏へのインタビュー内容を報告します。

私 ウイグルの問題は、残念ながら日本ではまだそれほど知られていない。中国での現状はどうなっているのか
イリハム氏 いろいろな話をしていかなければならない。ウイグルが、チベットのような大きな問題になるのには時間がかかるだろう。チベットには、ダライ・ラマ法王がいるため、中国はわれわれウイグルに対するようなひどいことをまだやっていない。
ウイグルでは、19歳から25歳の未婚の女性が強制的に自治区の外に連れていかれている。表向きは「仕事をさせる」と親切な口ぶりで言っているが、実は政策的に(漢民族との)同化を始めているのではないかと私たちは考えている。06年から11年までの5年間、毎年8万人、計40万人の女性たちを連れていくという計画だ。女性は、最初は山東省とか浙江省に連れていき、だんだんと各地に連れ出すことになっている。
また、今年6月からは、女性たちが結婚届を出すためには、少なくとも2年間は他の土地とかに行って働かないと、届け出ができないことになった。これは(新彊ウイグル自治区内の)カシュガル地区政府が発表したことだ。
私 日本人が知らないウイグルの今について、もっと教えてほしい
イリハム氏 ウイグルには資源がたくさんある。ところが逆に、我々には仕事が全くない。ウイグル人の女性たちが、親切に仕事を紹介するとして拉致されているのはさっき述べた通りだ。自分の家の前で石油が出ているのに、何千キロも離れた漢民族の土地に行って仕事を探さなければならない。どんな人が考えてもおかしい。
大学を卒業しても、5%の人しか仕事が見つからない。逆に、中国の大卒者(漢民族)を、中国政府がカネを出して旅費も支給し、どんどんウイグルに送ってくる。ウイグルの石油会社の社員は100%漢民族だ。
私 ウイグルはイスラム圏だが、信教の自由も侵害されているか
イリハム氏 イスラム教への弾圧はひどい。親として、子供にイスラムの教えを伝えてはいけないとされる。あちこちで、秘密的にイスラムを教えていたら、警察が連れていき、教えた人は必ず実刑判決を受ける。モスクの上には看板が掲げられ、「18歳以下と学生は入ってはいけない」「公務員は入ってはいけない」「年金受給者は入っていけない」…などと書いてある。断食の月には、わざわざ中国政府がカネを出して昼食を食べさせる。食べなかったら厳しく追及される。
私 ウイグルの人口構成はどうなっているか。また教育は
イリハム氏 現在、ウイグル人が47%で漢民族は51%、その他の小数民族が2%だ。例えば、私の故郷のハミ地区では、昔はウイグル人が92~94%だったが、今は僅か17%になってしまった。
ウイグルで一番大きな大学である新彊大では、2000年にウイグル語の授業が禁止され、02年にはすべての大学、専門学校にそれが広げられ、ウイグル語の授業はなくなった。06年からは幼稚園でもウイグル語は追放され、北京語になった。われわれの民族は、このままいってしまうとなくなる。すべての世界は民主化という目標に向かっているのに、われわれはこういう状況に置かれている。中国共産党は、民主主義に挑戦しているのだと思う。
私 イリハムさんの経歴、どういう経緯で日本に来たのかを教えてほしい
イリハム氏 私は69年にウイグルの中国語でハミというところで生まれ、88年に新彊大学で中国語を学んだ。中国の小数民族学生への政策では、中国語を2年間学んだ後に、内地のいろんな大学に入れることになっている。それで90年に甘粛省の西北師範大学の中国文学部に入り、91年4月に健康問題で中退した。あまり中国文学を勉強したくないこともあった。 それで91年末にハミ地区に戻り、文化局の公務員として働き、さらに食料局に移った。
日本に来るきっかけは、子供が生まれたことだ。息子が生まれ、その将来を考えるようになり、こんな悪い環境で育てたくないと考えた。どうしても自由な社会で子供を育てたかった。そのころ、兄が日本に行っていて、7年目だった。その兄に頼み、01年10月に横浜の日本語学校に留学し、1年5カ月勉強した。
日本には従姉妹もいた。彼女は、85年の中曽根内閣当時の中国人留学生受け入れの第一期ウイグル人留学生として日本に渡っていた。彼女に相談したら、日本に残りたいのだったら、大学院に行くよりもコンピューターを勉強した方が仕事が見つかると言われ、横浜のコンピューター専門学校に入り、05年4月からは日本のIT企業で働いている。昨年2月に転職したが、同じくIT関連企業だ。現在、家族4人で暮らしている。上の子は8歳になり、小学校2年生で日本の学校に通っている。下の子はまだ8カ月だ。従姉妹は今は米国に渡り、兄は来日して14年となり、帰化申請を検討している。
私 日本でこうした活動を始めることで、ウイグルにいる家族、親類に心配はないか
イリハム氏 心配はあるが、今、自分の家族のことだけを心配するというのはどうか。毎年拉致され、苦しんでいるウイグル人はみな、私の家族だ。そういう面できちんと考えてやらないといけないと思っている。どうしても日本で、ウイグルの現状を伝えないといけない。向こうに残っている親類もいつか理解してくれると思う。
…30分間ちょっと話をしただけですが、漢民族に乗っ取られつつある故郷ウイグルへの思い、危機感がひしひしと伝わってきました。この平和な日本で人権擁護法案が必要だと叫んでいる議員たちは、こうした現在進行形の本物の人権侵害、同化政策による固有の文化と歴史、民族そのものの抹殺劇については、どう反応するのでしょうか。おそらく、「それはそれ、これはこれ」と言ってたいして関心も示さないのだろうと思います。
そういえば、自民党人権問題等調査会の太田誠一会長はダライ・ラマ法王が来日した際に会いに行きましたが、「それまでチベット問題についてほとんど知らなかった」(周囲)と言いますから、何かのアリバイづくりに法王を利用したということでしょうね。少なくとも、チベットやウイグルでいま何が行われているかを直視し、その問題に取り組もうという姿勢は全く見られませんし。最初から期待していませんが。


by 047696
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