私は7月2日のエントリ「【一日一下】 原稿がボツった記者の心象風景」で、原稿が思うように載らない記者の思いを写真に託してみましたが、本日はそのものずばり、デスクノートにはさまれたまま放置され、朽ち果ててしまった原稿を2本、紹介したいと思います。ボツったぐらいですから、たいした内容ではありませんが、書き手としてはそれなりに面白いと考えたから出稿したわけで、せめてブログにアップして成仏させたいと。
ボツ原稿なので当然、見出しはありませんが、1本目は5月の胡錦濤・中国国家主席訪日時のエピソードです。外交巧者だとか、したたかだとか言われている中国も、意外と間抜けなところがあり、総身に知恵が回りかねている場合も少なくないことを伝えたいと思いました。数年前、外務省の某中国課長経験者は「中国の外交には原則があるように言う人がいるが、彼らは利にさといだけだ」と言っていましたが、まあそんなものなのでしょう。
また、福田首相がいくら中国に親しみを覚えていようと、やはり「田中角栄」ブランドにはなかなかかなわないのだという点も、あるいは興味深いかなと。中国はメンツを重んじるともよく言われますが、日本側の政治家のメンツには案外無頓着なようです。
《中国の胡錦濤国家主席の5月の訪日時に、中国側が当初、福田康夫首相との会談より前に、田中真紀子元外相との会談を行おうとしていたことが●日、日中外交筋の話で分かった。中国側は最終的には、日本との調整を経て、現職首相との会談を優先させるよう日程を変更したが、首相の徹底した親中姿勢や対中配慮も、中国における「田中ブランド」にはまだ及ばなかったようだ。
胡主席は5月6日午後に日本に到着し、夕方からは中国で「国父」と呼ばれる孫文ゆかりの都内のレストランで、福田首相らと非公式夕食会をともにした。この後、田中氏をはじめ日中関係に貢献があった大平正芳元首相、園田直元外相の家族らと会談した。
中国側は当初、この夕食会前に、胡主席と田中氏との会談を入れることを希望していたという。政府関係者は「『井戸を掘った人を忘れない』とする中国外交をやたら高く評価する人がいるが、『角福戦争』の経緯も、福田首相と田中氏の関係、現在の政治情勢もよく分かっていなかったのではないか」と指摘する。
田中氏の父、田中角栄元首相は昭和47年に日中国交正常化を果たし、福田首相の父、福田赳夫元首相は53年に日中平和友好条約を締結してその仕上げをした。ともに日中関係発展の功労者だが、長年にわたる激しい政争「角福戦争」を繰り広げたライバルでもある。
また、福田首相と田中氏も小泉政権時代の官房長官、外相として外交政策で確執があったことが知られている。福田首相は昨年12月末に訪中し、胡主席と会談したが、それに先立ち田中氏も同月、民主党の小沢一郎代表らと訪中し、胡主席と会っている。田中氏は、衆院会派では民主党・無所属クラブに所属している。》
…次もやはり中国にかかわりのある記事です。以前、このブログで安倍前首相と会談したことを紹介した世界ウイグル会議のトムチュルク副総裁へのインタビュー記事です。産経は割と最近、ウイグル会議の事務局長のインタビューを載せていたので、あまり似たような話では…とデスクにくいついてもらえませんでした。
実際のインタビューでは、もっと細かくいろいろな話を聞いたのですが、紙面に掲載しやすいように12字組で約60行の分量に抑えています。それでも、本当に紙面は狭く、他の記事に負けてしまったというわけです。
《中国・新彊ウイグル自治区から世界各国に亡命したウイグル人でつくる世界ウイグル会議のセイト・トムチュルク副総裁(トルコ在住)はこのほど来日し、産経新聞のインタビューに答えた。トムチュルク氏は、チベットやウイグルを弾圧している中国主催の北京五輪開会式への福田康夫首相の出席について、「中国に五輪開催の資格はあるのか。福田首相も胸に手を当てよく考えてほしい。平和な国、日本にふさわしい意見表明を願う」と訴えた。
||日本人に知ってほしいこととは
「ウイグル人も日本人と同じ人間としての尊厳を求めている。人権、自由、民主主義はすべての人類にとって平等で同じ意味を持つ。だが、中国共産党は自由と民主主義に対し選択肢を与えていない」
||中国の圧政とはどんなものか
「1949年に中国共産党が初めてウイグルに侵攻して以来、資産家、知識人は強制労働させられ、夫婦は引き離された。漢族は入植を続け、当時は人口比2%ぐらいだったのが、今では都市によって7~8割を占めている。教育も中国化政策がとられ、ウイグル語教育は受けられない。ウイグル人の9割は医療も受けられない。49年には70歳近かった平均寿命も今では約50歳にまで下がった。若い女性は内陸部の漢族の土地に仕事を紹介するとして移動させ、漢族と結婚させる同化政策もとられている」
||日本に忠告は
「すべての日本人、日本政府に訴えたい。ウイグルが中国から受けている差別や弾圧は、単に私たちだけの問題ではない。ウイグルが消えた後は、アジアの他の国がターゲットとなる。今中国にウイグル弾圧をやめるように働きかけることは、日本の将来のためでもある。日本には、アジアのリーダー的存在として立場をはっきりさせてほしい」》
…私に限らず、記者はみな、書いた原稿がボツになる悲哀を何度も味わっているはずです。新聞は商品なので、一定水準に到達していないものを記者側の都合だけで掲載するわけにいかないのは当然です。でも、時間や労力をかけ、相手と交渉し、ようやく記事に仕上げたものが採用されず、日の目を見ないというのは、何かすっきりしないものを抱え込んだようで嫌なものです。いっそのこと、みんなブログを始めてそこで掲載したらどうだろうかと、余計なお世話でしょうが、そんなことも考えてしまいます。
ボツ記事でも、中には読者が面白いと思ってくれたり、知識として活用してくれたりするものがきっとあるだろうと考えると、とてももったいない気がします。まあ、今回のエントリは私の単なる自己満足かもしれませんが。


by iza-denbo
河村名古屋市長の南京発言と教…