本日は新聞休刊日なので、会社から電話がかかってくることもたぶんありませんし、比較的ゆったりとした気分で過ごしています。まあ、休刊日と言っても、一昨年には北朝鮮が核実験を実施したため、政治部員は全員出勤となったこともありますし、自然災害などがあっても休みは吹き飛ぶので油断はできないのですが。たまに緊張を解かないと、精神衛生によくないですしね(いつも緩んでいるのではないか、という指摘もありそうですが)。
というわけで、きょうは10月12日のエントリ「最近読んだ本について・児童文学恐るべし」以来、1カ月弱ぶりに読書シリーズをアップします。まずは、前回「激賞」した上橋菜穂子氏の上下巻の作品からです。

…感銘を受けました。これも児童文学・ファンタジーの体裁をとっていますが、これはどう考えても大人が読んだ方が面白く、より理解できるのではないかと感じます。主人公の少女、エリンの常に孤独と向き合いつつ、出会う人や物事の一つひとつを透徹した目で見つめながら成長していく姿に圧倒されました。前回紹介した上橋氏の「守り人」シリーズが10巻(プラス外伝1巻)もあるのに対し、これは2巻だけですから読みやすいとも言えますが、クライマックスの迫力と、それと矛盾するような静謐な透明さときたら…。
次は、明治時代初期、黎明期の柔道(柔術)とその後、世界に広まっていく姿を描いた夢枕獏氏の大作です。柔道の創始者、嘉納治五郎をはじめ、綺羅星のこどく登場した群像の激闘、隆盛、生き方を描いていて、とても読み応えがあります。

さすが格闘小説の第一人者だと思います。確か全4巻となるはずなので、あと2冊は楽しめるのがうれしいです。小説ですから、当然、作者の演出、虚構も入っているのでしょうが、登場人物、エピソードは基本的に実在の人物だといい、とても興味深いものがあります。
次は、北森鴻氏の絵画修復師シリーズの第2弾です。前作の「深淵のガランス」に続き、主人公がさまざまなトラブルに巻き込まれ、超絶的な絵画修復の技法を見せて活躍するものの、どこか報われない日々を送っています。

読んでいて面白いし、作品世界も興味深いのですが、何だか主人公が痛い目に遭ったり、周囲に翻弄されたりしすぎていて、痛々しいというか、いまひとつカタルシスは感じませんでした。まあ、好みの問題でもあるのでしょうが。
さて、次は過去のエントリで「越境捜査」「恋する組長」の2作品をかなり高い評価で紹介した笹本稜平氏の新刊です。帯には「さらに熱い!警察小説、異色の傑作だ!!」とありますが…。

元私立探偵が警察庁キャリアの元同級生の引きで警視庁に再就職し、素行調査官になって…という設定はユニークですし、詳しくは書きませんが、事件の黒幕の設定もかなり意表を突くものはあります。ただ、「越境捜査」のような濃密さは感じられず、展開にぐいぐい引っ張られるような説得力はありません。また、それでは軽いタッチで書かれているのかというと、「恋する組長」のようなどこか突き抜けた諦観ともつながる明るさはなく。うーん、期待が大きかった分、辛い点数をつけてしまいましたね。
自分でも読書傾向が少しマンネリ化しているかと反省していますが、次は、以前のエントリでどちらかというけなしてしまった山本一力氏の新刊です。けなすぐらいなら、買って読まなければいいのに。

どうしても時代小説が読みたい、という時があるのですよね。で、この本は「損料屋喜八郎」シリーズのたぶん第3作だと思いますが、前作を読んでいるので、つい続きも読みたくなるということが。相変わらず、やたらと「器量」という言葉が繰り返し振り回されているのが鼻につくのですが、第4作が出ても買ってしまうのかなあ。文句があるなら読まなきゃいいというだけの話なのですが、ワンパターンだよなあ。
最後は、以前、「十手人」という作品を読んでまあまあ面白かったので買ってみた押川國秋氏の作品です。帯の「泣きたい日ばかりじゃないさ。」というコピーにもひかれましたし。

で、私はこれをこの一冊で完結する作品だと思いこんで読んでいて、変だな、話が進まないなと思いつつ最終ページまできて「何だこりゃ。おいおい」とようやく、シリーズものであることに気づきました。ちゃんと帯に「新シリーズ開幕」と書いてあるのに、我ながら本当にいつでもどこでもどこか抜けた男です。敵持ちの浪人と長屋の住人たちとの交流や日々を描いたものですが、これも妙に「軽い」タッチが少し気になりました。
まったく何の関係もないことかもしれませんが、世の中全体が何に対しても「分かりやすさ」を要求する傾向がある中で、編集者も作家にそれを求めているのではあるまいかとふと思いました。まあ、何の根拠もない妄想ですし、児童文学でも上橋氏のように重厚感のある作品が売れているのですから、いよいよ怪しいバカな考えなのでしょうが。


by saxophone
短信・金環日食で始まる一日