昨日は自民党の中川昭一政調会長にインタビューし、記事を書きました。記事は11字組で200行弱と、かなり大きく掲載されましたが、それでも中川氏が語ったすべてを伝えることはできません。
中川氏に「伝えきれなかったところを私のブログに掲載していいですか」と聞いたところ、快諾していただきましたので、きょうは記事に掲載されなかった部分について書こうと思います。
初対面の政治家や高級官僚にインタビューに行くと、こちらの知識や理解力を試すような受け答えをする人がけっこういます。
そういう際には、「そりゃ正体の分からない不勉強かもしれない記者に、真面目に答えるのは面倒だろうな」と相手の気持ちも分かるのですが、それはそれとして、勝負に臨むような強い緊張を強いられて疲れます(もちろん、仕事だから多少の緊張は当然ですが)。
幸い、中川氏とはこれまでも何度か取材だとか酒席だとかで同席したことがあり、インタビューはスムーズに進み、無事紙面化できた次第です。それでは、紙面からあふれた部分を中心に、まず、党と官邸のあり方について。
《私:もうすぐ就任3ヶ月になりますが、安倍政権の政調会長として重責を担われ、首相等との連携とか連絡等うまくいったという印象ですか
中川氏:非常にうまくいってると思いますよ。これは私だけじゃなくて、幹事長も総務会長含め、参院側も含めてですね。というのは、われわれもできるだけ党の声を総理に届くようにしてますし、官邸もよく連携をとっていると思ってますんでね。少なくとも、小泉さんのやり方とはちょっと違うと思いますよ、よく連携とってると思いますよ。
私:小泉さんのときよりも今のほうが連携が取れているという意味で受けとってよろしいですか
中川氏:小泉さんは小泉さんのやり方があって、安倍総理は安倍総理のやり方があるわけですから。だから、やり方の違うが結果的にはわれわれ党側からしますとね、よく連携、できるだけとってるなと。もちろん、経済財政諮問会議とか教育再生会議とか、内閣官邸機能の強化はやってますし、それはそれとしてね、内閣と党、官邸と党の間はですね、よく意見なり、考え方も、よく聞いてくれますね。
私:そういうやり方について、小泉さんのやり方に慣れた人たちは、総理の顔が見えないという批判をしている。それについてはどう思うか。
中川氏:それは小泉総理は小泉総理であって、 安倍総理は安倍総理ですから。安倍総理は党の意見もしっかり耳を傾けますと、予算委員会でも私の質問に対してはっきりいってますしね、また実際そうだと思ってますから、だから、その結果、顔が見えないとするならば、むしろ、総理の周りにいる人たちがね、もう少し総理の真意を汲むべきではないかと。
私:政調会長と幹事長の意思疎通がうまくできてないのではないかとも言われるが、それはどうか
中川氏:(苦笑して)たまたま名前が一緒だということもあるんでしょうけどもね、私自身は、あるいは幹事長もたぶんそうだと思いますけど、決してそうじゃない。道路特定財源であろうが、あるいは社保庁解体であろうが、途中ではもちろんいろんな発言をそれぞれしてますけども、政策決定は党手続きでやるわけですから、そのときには事前に幹事長、総務会長までお話をして、それに対して違うとかそれはだめだと言われたことは一度もありません。》
最後の質問は答えにくかったでしょうが、まあちゃんと答えてくれました。2人の政治信条の方向性が違うのは初めから分かっていることですから、それを前提としてどううまくやっていくかなのでしょう。官邸スタッフへの批判ととれる言葉もありますね。
また、安倍首相は「問題ない」というスタンスでしたが、自民党内からも中川氏を擁護する意見はあまり出ず、「核タブー」が国会をいかに強く支配しているかもよく分かりましたね。
《私:核議論発言について、改めて真意と、それがどのような意味を持ったかについてお話ください。
中川氏:当然、7月のミサイル実験、10月の核実験という北朝鮮のやってはいけないことをやったことが当然前提になっているわけですけども、率直に言って、もう少し私よりも早くいろんな人から安全保障について議論が出てしかるべきと思っておりました。産経はもちろんきちっと社論を出していただきましたけども、総じて一般のマスコミは発言することが、不見識だとか、批判的な論調だった。
けれども、最近はこういう時代ですから、私のところにいろんな問題で、直接メール等がきますけども、やはり国民のほうが真剣にやっぱり今の状況というものを認識し、心配をしているなあと。反対もありましたけども、議論自体必要であるという、あるいはそれ以上の意見の方が多かったですから。
それからその直後に私、アメリカに行ったり、あるいは各国のいろんな人とお会いしましたけども、「お前の真意は何だ」と、いうことで多くの外国の方からも聞かれました。それはそれで非常にありがたいことだったんで、率直にお答えしましたけども、冷静崩壊以降、国会においてもあまり安全保障の議論というのはなかった。これは諸外国では、常に国の安全というものは、国会を含めて議論されるべきだとされている。ですから、むしろ国会という場で議論が行われないことの方が、他の国に比べてちょっと異常ではないか、ということすら言われましてね。
私:確かにそうですね。
中川氏:ええ、だから、産経でもいろんな識者の方々のご議論もありましたし、他のところでもいろんな方が(意見を)おっしゃってますから、むしろ国会の外の場でいろんな議論がなされているんじゃないかと。国会が一番議論されてないんじゃないかと。
私:言論の府である国会が、言論統制というか自己規制をしていたように見えます。
中川氏:自己規制がいい場合と悪い場合ありますから。国会というのはある意味では何を言ってもいい場。憲法51条で保障されているわけですからね。だから、非核3原則じゃなくて4原則、最近は私は5原則と言ってます。
私:5原則とは、4つ目の「言わせず」に、さらに何が加わるんでしょうか?
中川氏:考えてもいけないという。
私:はっはっは。なるほど。
中川氏:こうした問題はずーっと議論しなければやっぱり忘れますよね。旧聞になってしまってはだめなのであって、例えば現時点で6カ国協議はどうなった、とか(現実と結びつけて考えないといけない)。
私:日本があらゆる選択肢を、特に議論することも含めて持っていることは示さないと、諸外国、北朝鮮や中国を牽制する意味もなくなりますしね。
中川氏:日本はもちろん、憲法あるいは非核3原則等と、積み上げてきたものがありますから、それはわれわれも当然踏まえて。それから日米安保、日米原子力協定、NPT、国連憲章、いろんなものありますけれども、それらを踏まえながら目的はやっぱり日本の平和と安全をどうやって守っていくか。
長崎の原爆被害のようなことが起こってはならない。願うだけじゃなくて、起こらないように努力をしなければならない。これは日本だけの努力だけではなくてもちろんアメリカ、中国、それから北朝鮮にも働きかけなければならないと、いうことですから。願うだけで何も起こらないんだったら、それで一番いいんですけども、願うだけで叶わないことが絶対ないと、私は思えない。やっぱりやるべきこと、言うべきことは内外でやっていかなければいけないと思ってます。》
非核5原則の説明にはついうけてしまいました。笑った一方で、この問題の深刻さ、根の深さを思わずにはいられない話でもありました。
この核と安全保障の問題は、本当はもっと詳しく話を聞きたい点でもあったのですが、インタビュー時間は30分間と限られていたので、泣く泣く次の話題に移りました。何せ政調会長という職は、部屋の前に陳情やらご説明やらで常に人が待っている多忙な仕事なので仕方ありません。
次に聞いたのは、来年の参院選に向けて、地方公務員制度改革や官公労の問題にどう取り組むかです。実は私はここに一番、関心があったのでした。
《私:総理は先日、菅総務大臣に地方公務員の給与下げを早く、確実にやれと、指示されたが、これの受け止めと、党の方では何か取り組まれるのかどうか
中川氏:まず、公務員制度改革はこれから大きな議論になっていくと思いますが、それは主に国の方のこれからの作業ですけども、地方公務員もね、地方の財政状況も依然として厳しいわけですから、やはり、公的サービスという意味では国も地方も一緒ですんでね。地方自治の本旨というものは尊重しながら、国としてかかわっている部分についてはそういう方向性でやれという総理の指示、これはやはり重たいものがあるんだろうと思います。
来年、2007年には税制の抜本改正をやるというための一つの国民に対するけじめとして、予算編成も徹底的な財政健全化の予算を組んだわけですから、国民の理解がそれによってはじめて、税というところで議論ができるんだろうと思いますし、また公的サービスについても必要なもの、必要でないものをはっきりと見直していくという作業の一環としてね、何回も言いますけど、地方自治の本旨というものは十分踏まえながら、やはりそういう議論も当然、進めていかなければならないんだろうと。
特に学校の先生は比較的給与がいいわけですけども、教育改革、まあ基本法が成立した後、三十何本の法律をこれからやっていくわけですけも、やっぱり学校の先生というのは非常に大事ですから。だから、免許の問題とそれから処遇の問題というのはね、やっぱりメリハリつけてやっていく必要があるんだろうと思いますね。
私:それに関連してですが、当然、そういった方向でやるときには自治労や日教組が反対運動を当然やってくると思うが、これは実は参院選にもかかわってくる。森元総理が以前、産経のインタビューで、「日教組、自治労を壊滅できるかどうかが参院選の争点だろう」という見通しを示した。これについての政調会長のお考えは?
中川氏:まあ、日教組のごく一部でしょうけども、教職員のごく一部が教育基本法審議のときに何ヶ月にもわたって国会を包囲してですね、そしてマイクと、阻止行動をしてましたね。あるいは社保庁改革の大きな柱がやはり職員のモラルの問題であり、その中核をなしているのが自治労であったということですから、真の国民の理解と協力が得られるような教育制度、あるいは社会保障、年金制度を守るためにはですね、やはりそういった部分についても思い切ってメスを入れていく。
それが仮に選挙の争点になるんであれば、われわれは大いに結構であると。どちらが国民のためになる政策を掲げるかと。自治労を守りますか、一部の教職員組合の活動家を守りますかと。あるいは国民の全体のサービスを向上させる、あるいは是正することを守りますかと。そういう選択で国民に信を問うとするならば、大いに私自身も望むところだと思います。
私:去年の5月の段階で、自民公明の与党両党は二幹二国(幹事長、国対委員長会談)で、地方公務員法改正と教育公務員特例法改正に合意しているが、その後動いてない。これについて政調会長としてもう一度前に進めるお考えはありませんでしょうか
中川氏:これについてはやはり総理の指示もあり、われわれも同じ立場ですんで、進めていかなければいけないというふうに思いますね。》
「望むところだ」とは気っぷの良いセリフです。中川氏は、現在は罰則のない地方公務員、教職員による政治的行為について、国家公務員並の罰則を設けるための法改正について、「進めていかなければいけない」とはっきり言ってくれました。
この問題は、山梨県教組の異様な実態の取材を始めたときから、ずっと私の中で懸案事項だったので、うれしくなりました。また、「総理の指示もあり」という言葉に、安倍首相のやる気も感じられますね。
それでは、その官公労から支援されている民主党とはどう対峙していく考えなのか。来年の通常国会について聞きました。
《私:小沢民主党は、選挙を控えて何でも政局にからめてくるかもしれませんが
中川氏:何でも政局っていうのは政策ベースの政局ならいいですけども、時系列的につい一年前、あるいは過去に言ったことやったことと全然違うことを、国民のうけを狙ってやっていく。例えば核議論についても、99年の鳩山さん、2002年の小沢さん、非常に私よりもはるかに踏み込んだ発言をしているとか。
あるいは、この年金改革、年金一元化の問題にしてもね、あるいは農政改革にしても、極めて非現実的なもので、一見ものすごく耳障りはいいんですけれども、非常にその実現不可能な、提案といいましょうか、案を提示してますんでね。そこはやはりわれわれも発信力を強化していかないと、流されてしまう可能性もある。
どちらがより責任を持った対応か、ということを総理を先頭にして政府与党一体となってこれから地方選挙、参議院選挙に向けて、われわれも努力していかなければいけないと思いますね。
次の国会はたぶん、雇用、労働問題、福祉問題。政策課題としては、もちろん外交、安全保障もありますけども、国民に関係のある問題としては景気対策と並んで、こういう雇用労働社会福祉、これが身近な問題として多分争点になってくるんだと思います。
次に聞いた話も大事なポイントでした。安倍首相は、慰安婦募集の強制性を認めた河野談話について、とりあえずは内閣として継承するものの、「閣議決定されたものではない」として、将来的に見直していく考えだとされます。
そして、この「外交上も大きなダメージとなった」(外務省幹部)という河野談話について、安倍首相とともに勉強を重ねてきた若手議員の一人が、中川氏でした。中川氏は、これについても前向きな答えをしてくれました。
《私:先日、自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」が再開されました。これは先生も思い入れのある会だと思います。この会の顧問として、そういった問題にも何かお手伝いか何かされていくお考えはありますか
中川氏:この前やった議連に、私も顧問として出席しましたけど、やっぱり当時まだ議員でなかった若い人たちの間でもね、あの河野談話っていうのは非常に不正確であると。気持ちは入っているけれども、その前提が不正確であるというような意見もずいぶんでましてね。
やはり、われわれは与党という立場ですから、これについて議論をしていこうという意見もずいぶん出ました。勉強会のときにも当然、そういう結論を出したわけですから。私は今顧問という立場ですけども、一生懸命やっている議員の皆さん方のこれからの議論を期待していきたいですね。
私:安倍首相も国会答弁で、官憲による強制連行について否定したわけですが、そういったことが対外的にも誤解を受けないような形に持っていければな、と思います。
中川氏:ああいう10年以上前のものが、ある意味では既成事実化してしまうということを、何でもそうですけども、既成事実化しないようにきちっと。政治としてあるいは政府としてやれるべきところが、直すことがあればできるだけ早く是正していかなければ海外に対しても間違ったメッセージを与える。子供たちに対しても間違った情報を与えるということは、避けなければいけないですね。》
最後に、これは「スジ」の話ではないので、紙面には書きませんでしたが、中川氏に来年の抱負を聴きました。彼の生真面目な性格が伝わってくるような答えが返ってきました。
《私:今年はいろんな慶事もありましたが、同時に日本社会はものすごい難問、内政も外政も抱えています。来年はどのような年にしたいですか。
中川氏:衣食足りて礼節を知る、なんて古い言葉が突然、頭に浮かんできましたけども、衣食も礼節も足りるような年にしたいなと。どっちが先かということは別にしまして、真の意味の経済の活力を国民が実感できるということ。
それと同時に、やはり、心身の心の部分ですね。ほんとに悲惨な犯罪、子供たちもいろんな立場で関係してるような犯罪とか、親子とか、家族とか友達といった大切な関係がですね、改めてこう、自分を支え、また自分がそういう関係の中で支えていくような、それが、ひいては世界に真の意味で貢献できるような、そんな生きがいを国民が持てるような、国に少しでもしていきたい。
再チャレンジという言葉がよく言われてますが、私が尊敬する林真理子さんがね、「再チャレンジというのは要するに新規巻き直しでしょ」と言ってましたけど、これは総理には悪いけども、再チャレンジよりも新規巻き直しの方が言葉としてはいいな、と思ってますが、一年の計ということを敢えて言えば、今年もがんばるぞ、あるいは今年こそはがんばるぞ、新規巻きなおしだと。この著作権は林真理子さんにあるんだけども、さっき言ったような漠然とした意味で、よりよい年に、去年よりも、今年、そしてまた来年、そういうふうにしていきたいですね。》
今年も残すところあとわずか。来年が、中川氏の言うように今年よりもいい年であることを祈ります。「新規巻き直し」か…。


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